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津地方裁判所 昭和61年(わ)132号 判決 1987年1月27日

国籍

韓国(慶尚北道安東郡一直面松里洞二八二番地)

住居

三重県桑名市大字五反田五八三番地の一

鋳造業

江本湧一こと李湧一

西暦一九四〇年一二月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官安達敏男出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、三重県桑名市大字五反田五八三番地の一において、「江本鋳造所」の屋号で鋳造所を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず適宜の金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行うなどの方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五七年分の実際の所得金額が五一〇四七七一九円で、これに対する所得税額が二四六六五二〇〇円であるにもかかわらず、昭和五八年三月一五日、同市外堀二四番地所在の桑名税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二七四六一六三円で、これに対する所得税額が零円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、同年度分の正規の所得税額との差額二四六六五二〇〇円を免れ

第二  昭和五八年分の実際の所得金額が四〇二一三四六九円で、これに対する所得税額が一七四四〇六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五九年三月一二日、前記桑名税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四二七三三四九円で、これに対する所得税額が三〇二〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、同年度分の正規の所得税額との差額一七一三八六〇〇円を免れ

第三  昭和五九年度分の実際の所得金額が一〇三二九〇四八五円で、これに対する所得税額が五八三〇三八〇〇円であるにもかかわらず、昭和六〇年三月一五日、前記桑名税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七六八八〇一四円で、これに対する所得税額が一〇二四二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、同年度分の正規の所得税額との差額五七二七九六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  江本こと李秀一、同李栄一の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  江本こと李泰一の検察官に対する供述調書

一  証人大村敏夫の当公判廷における供述

一  花井清隆作成の上申書

一  大蔵事務官作成の各査察官調書及び脱税額計算書説明資料並びに証明書(検甲10)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の各証明書(検甲6、7)及び脱税額計算書(検甲2)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲8)及び脱税額計算書(検甲3)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲9)及び脱税額計算書(検甲4)

(法令の適用)

一  判示各所為につき 所得税法二三八条

一  刑種の選択 所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択

一  併合罪の処理 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条、一〇条(犯情最も重い判示第三の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

一  労役場の留置 同法一八条

一  刑の執行猶予 同法二五条一項

一  訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

(裁判官 櫻林三郎)

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